Geminiの情報漏洩リスクとは?個人アカウントとGoogle Workspaceの違い、業務で使うときの設定と注意点
Googleの生成AI「Gemini」に入力した情報は、学習や人のレビューに使われるのか。個人のGoogleアカウントと仕事用(Google Workspace)での扱いの違い、Geminiが社内のメールやファイルを読むことのリスク、報告された脆弱性、管理者が決めておく設定を、Googleの公式資料と研究者の報告から整理します。
Geminiは、Googleの生成AIです。単体のアプリ(gemini.google.com・スマートフォンのアプリ)のほか、Gmail・ドキュメント・ドライブ・Chromeなどにも組み込まれています。「入力した情報が漏れないか」の答えは、個人のGoogleアカウントで使うか、仕事用(Google Workspace)のアカウントで使うかで大きく変わります。
※ 2026年10月20日にGoogleの公式ページで確認した内容です。扱いは改訂されることがあるので、判断の前に最新の公式ページと契約を確かめてください。
Geminiで情報が漏れうる経路
| 経路 | 個人のGoogleアカウント | 仕事用(Google Workspace) |
|---|---|---|
| 入力した内容の扱い | 「アクティビティの保存」がオンだと学習に使われ、一部を人のレビュアーが読む1 | 学習にも人のレビューにも使わない3 |
| Geminiが読む社内のデータ | つないだGmail・ドライブなどを読む1 | 社員がアクセスできるメール・ファイルを読む。共有の設定が広いと、回答に出る範囲も広がる3 |
| 仕込まれた指示 | 外から届くメール・予定・Webページに仕込まれた指示に従ってしまうおそれ(プロンプトインジェクション)。どちらのアカウントでも起こりうる49 | 同左 |
| 他社製のアプリをつなぐ | 自分でつないだ他社製のアプリのデータは、Googleが監視も保護もしない1 | 他社製のアプリは別の規約が適用され、Workspaceのプライバシーの説明の対象外3 |
個人のGoogleアカウントの場合
学習と人によるレビュー
個人のアカウントでは、「アクティビティの保存」がオンの間、Geminiとの会話は学習を含むサービスの改善に使われます。18歳以上は既定でオンです12。
- 人のレビュアーが読む: 委託先を含む人のレビュアーが、会話の一部を確認します。Googleは、レビュアーに見られたくない機密情報は入力しないよう求めています1
- レビュー済みの会話は消せない: レビューされた会話は、アカウントから切り離して最長3年保存され、アクティビティを削除しても消えません1
- オフでも短期間は残る: 「アクティビティの保存」をオフにしても、会話は最長72時間アカウントに保存されます2
- フィードバック: オフでも、フィードバックを送るとその内容は人がレビューし、関連する会話とともに最長3年保存されます1
Googleの資料が扱いを分けているのは「個人のアカウントか、仕事用・学校用のアカウントか」です1。業務の情報を入れるなら、仕事用のアカウントを使うのが前提です。個人のアカウントで学習を止める手順は学習させない設定の手順にまとめています。
入力してしまったら
アクティビティの画面(gemini.google.com の「設定とヘルプ」→「アクティビティ」)から、その会話を削除します2。ただし、すでにレビュアーに回った会話は削除しても残ります1。消せない可能性がある前提で、入力したのが個人情報や取引先の情報なら、社内の事故の報告の手順に乗せます。
Geminiに作業を任せるとき
Googleは、Geminiが誤った判断をして、予期しない購入や第三者とのデータの共有につながるおそれがあるとして、Webの閲覧や作業を注意して見守り、必要なら止めるよう求めています。自分でつないだ他社製のアプリのデータは、Googleが監視も保護もしないとしています1。
仕事用(Google Workspace)の場合
入力した内容の扱い
Workspaceの対象のエディションでは、Geminiとのやり取りは組織の外に開示されません。プロンプトやファイル、回答が人のレビュアーに読まれることはなく、許可なく学習に使われることもありません3。共有のファイルの中で使っても、自分のプロンプトや回答はほかの共同編集者には見えません3。
保存期間は管理者が決めます。ドキュメントやGmailの中のGeminiは90日から無期限、Geminiアプリは最長36か月の範囲です。会話の保存をオフにしても、最長72時間は保存されます3。
Geminiは、社員が見られるものを全部読める
Geminiは、既存のアクセス権に従い、社員がアクセスできるメールやファイルだけを読みます3。裏を返せば、本来は関係のない社員にも共有されてしまっているファイル(「リンクを知っている全員」で共有したまま、全社に共有したまま、など)は、Geminiに尋ねるだけで回答に出てきます。Geminiを使わせる前に、ドライブの共有の設定を見直しておくことが大事な準備です。
既定で使える状態になっている
Geminiアプリは、ほとんどのWorkspaceのエディションで中核のサービスになり、既定で有効になっています3。導入を決めていなくても、社員はすでに使える可能性があります。
報告されたGeminiの脆弱性
Geminiがメール・予定・ドキュメント・Webページを読むようになったことで、そこに仕込まれた指示に従ってしまう脆弱性が、研究者から相次いで報告されました。いずれもGoogleが修正しています。
- カレンダーの招待1件で乗っ取り(2025年8月): 予定の題名に指示を仕込んだ招待を送ると、利用者がGeminiに予定を尋ねたときに、予定の削除やメールの持ち出し、位置の特定などをさせ得た6
- 検索履歴やWebページから保存情報を持ち出す(2025年9月): 悪意あるサイトが検索履歴に書き込んだ指示や、ブラウジング機能を使って、利用者の保存情報や位置情報を外部に送らせ得た7
- 共有された文書1つで社内のデータを持ち出す(2025年12月): Gemini Enterpriseで、指示を仕込んだドキュメント・予定・メールを共有しておくと、社員が普通に検索しただけで、社内のGmail・カレンダー・ドキュメントの情報が攻撃者に送られ得た。社員のクリックは不要だった8
- 開発者向けのGemini CLI(2025年7月): 信頼できないコードを調べさせると、気づかれずにコマンドを実行され得た5
Googleは、指示を見つける分類器、怪しいURLや外部の画像を表示しない処理、重要な操作の前に利用者に確認する仕組みなど、何層もの対策を入れているとしています4。一方でIPAは、外から読み込むデータに仕込まれた指示(間接プロンプトインジェクション)について、完璧な技術的対策は知られていないとしています9。修正が進んでも、Geminiに読ませる範囲と、任せる操作を絞ることが基本です。プロンプトインジェクションの対策
業務で使うときに管理者が決めること
Google Workspaceの管理コンソールで、次の点を決めておきます3。
- アカウントを仕事用に統一する: 業務では仕事用のアカウントで使う。個人のアカウントでの業務利用を認めるかを、社内のルールで決める
- Geminiアプリの有効・無効: 既定で有効なので、使わせるかどうか、どの部署から使わせるかを決める
- Geminiに参照させるサービス: Gmail・ドライブ・ドキュメント・Meet・Chatの中のGemini機能と、Geminiが検索する範囲(Gmail・ドライブ・カレンダー・Chat)を、サービスごとに必要なものに絞る
- 会話の保存期間: 社内の文書の保存の方針に合わせて決める
- ドライブの共有の設定: 社外への共有や「リンクを知っている全員」の共有を見直し、Geminiに読まれて困るファイルの権限を直す
- 他社製のアプリの接続: 他社製のアプリには別の規約が適用され、Workspaceのプライバシーの説明の対象外になるので、つなぐことを認めるかを決める
- フィードバック: Workspaceのフィードバックは学習には使われず、最長18か月保存される。プロンプトと出力を添えて送るかどうかを社員に伝える
社員に伝えること
- 業務の情報は、仕事用のアカウントのGeminiにだけ入れる。個人のアカウントで使うなら「アクティビティの保存」をオフにし、機密情報は入れない
- Geminiに任せた操作(予定の変更、メールの送信、Webでの作業)は、確認の画面を読んでから進める。おかしいと思ったら止める
- 外から届いたメールや予定、共有された文書をGeminiに要約させるときは、中に指示が紛れ込んでいるおそれがある。回答に不審なリンクや依頼が出たら従わない
社内ルールの作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方、ほかの生成AIも含めた比較は生成AIからの情報漏洩にまとめています。
チェックリスト
- 業務で使うGeminiは、仕事用(Workspace)のアカウントか
- Geminiアプリが既定で有効になっていることを把握し、使わせる範囲を決めたか
- Geminiに参照させるサービスを、必要なものに絞ったか
- ドライブの共有の設定(社外共有・「リンクを知っている全員」)を見直したか
- 会話の保存期間を決めたか
- 他社製のアプリの接続を認めるかを決めたか
- 個人のアカウントで使う社員がいる場合、「アクティビティの保存」をオフにする手順と、入れてはいけない情報を伝えたか
実際に起きた事例
事例集を見る-
Gemini Enterpriseに、共有されたドキュメントや予定・メール1件で社内のGmail・カレンダー・ドキュメントの情報を持ち出され得る脆弱性「GeminiJack」(Noma Security報告)
Noma Securityは、Gemini Enterprise(以前はVertex AI Searchにも)に、攻撃者が指示を仕込んだGoogleドキュメント・カレンダーの予定・メールを社員と共有しておくだけで、社員が普段どおり検索したときにGeminiが社内のGmail・カレンダー・ドキュメントを探し、結果を外部の画像の読み込みに見せかけて攻撃者に送ってしまう脆弱性があったと公表した。社員がクリックする必要はなく、従来のセキュリティ製品では見分けにくいとしている。
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Geminiの3つの機能(Cloud Assist・検索のパーソナライズ・ブラウジング)に、利用者の保存情報や位置情報を持ち出され得る脆弱性(Tenable報告「Gemini Trifecta」)
Tenableは、Geminiの3つの機能に脆弱性があったと公表した。Google CloudのGemini Cloud Assistでは、攻撃者が書き込んだログをGeminiが要約するときに、その中の指示に従ってしまうおそれがあった。検索のパーソナライズのモデルでは、悪意あるWebサイトが閲覧者のChromeの検索履歴に指示を書き込み、Geminiに利用者の保存情報や位置情報を漏らさせ得た。ブラウジング機能では、外部のサイトへのアクセスを使って、それらの情報を攻撃者のサーバーに送らせ得た。
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Googleカレンダーの招待1件でGeminiに攻撃者の指示を実行させ、予定の削除やメールの持ち出しなどをさせ得る攻撃手法(SafeBreach報告)
SafeBreachの研究者は、予定の題名に指示を仕込んだGoogleカレンダーの招待を送るだけで、利用者がGeminiに予定やメールについて尋ねたときに、Geminiが攻撃者の指示に従ってしまう攻撃手法を公表した。実証では、予定の削除、スパムやフィッシングの表示、メールの持ち出し、位置の特定、Zoomでのビデオ配信、つないだ家電の操作などを示した。
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AIコーディングツール「Gemini CLI」に、信頼できないコードを調べさせると気づかれずに任意のコマンドを実行され得る脆弱性(Tracebit報告)
Tracebitは、Googleが2025年6月25日に公開したコマンドライン用のAIエージェント「Gemini CLI」に、既定の設定のまま信頼できないコードを調べさせると、利用者に気づかれずに任意のコマンドを実行され得る脆弱性があったと公表した。READMEなどのファイルに仕込んだ指示(プロンプトインジェクション)と、利用者が許可したコマンドとの照合の甘さを組み合わせ、無害なコマンドに見せかけて環境変数を外部に送る手口を示した。
この記事の根拠にした資料
- Google「Gemini アプリのプライバシー ハブ」
- Google「Gemini アプリのアクティビティを管理、削除する」
- Google「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」
- Google「Mitigating prompt injection attacks with a layered defense strategy」
- Tracebit「Code Execution Through Deception: Gemini AI CLI Hijack」
- SafeBreach「Invitation Is All You Need: Invoking Gemini for Workspace Agents with a Simple Google Calendar Invite」
- Tenable「The Trifecta: How Three New Gemini Vulnerabilities in Cloud Assist, Search Model, and Browsing Allowed Private Data Exfiltration」
- Noma Security「GeminiJack: the Google Gemini zero-click vulnerability leaked Gmail, Calendar and Docs data」
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編]」